(最終評価日:2024年10月18日)
2024年10月 東証プライム市場 IPO
会社URL:https://rigaku-holdings.com/
とりあえず総評成長力 C : 財務の外観と実態は相違しているが、事業内容優良で緩やかに成長!
納得点数 | 懸念点数 | 成長可能性 総合評価 |
+6点 | ▲3点 | 3点 (ランクC) |
※足元株価は考慮せず、総合評価はA~Eだよ!
- X線機器のトップメーカーであるリガク・ホールディングスが上場する。
- ニッチ市場の老舗優良企業が、カーライルのIPOスキームで上場を果たしたケースだ。PEファンドのテキストに載るくらいの大型事例だね。
- 後述してあるけど、実態財務では、カーライルのLBO合併で純資産がのれん資産に置き換わり、債務過多で財務体力は極めて脆弱化している。売上の見かけ増加も、カーライルの合併統合演出が大半かもしれない。
- ただ、当社の事業内容は成熟段階ながらピカイチ。ニッチ市場でシェアを急拡大しにくい業界特性はあるけど、少しずつ成長していくと思うよ。
アルが評価する成長可能性
【有価証券届出書による事業内容】
(前略)当社グループの製品は、物質構造の解析や含有元素の特定、条件変化に伴う物性変化の分析、表面からでは見えない内部構造の把握などを通じて、顧客が行う有機・無機の新たな材料の研究開発に寄与しているほか、企業の生産現場において不純物やキズなどの欠陥の検知に役立てられております。 日本国内において当社グループのX線回折装置(XRD)は75%(注1)の高い市場シェアを有し、国外に向けては海外売上高比率(注2)が69%(2023年12月期)に達しております。また、当社グループの製品の応用分野は、半導体や電子部品、電池、環境、エネルギー、ライフサイエンスなど、幅広く及んでおります。世界で約2,000名(2024年7月31 日時点、平均臨時雇用人員数を含む。)の従業員が、日々「視るチカラで、世界を変える」イノベーションの推進に 取り組んでおります。(以下略)
【財務状況】
引用:東京地下鉄株式会社(E04153) 有価証券届出書(新規公開時)
https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100UEKD.pdf
決算期 | 2022/12 | 2023/12 | 2024/6 (6ヶ月)
|
売上高 | 62,701 | 79,887 | 42,779 |
営業利益 | 6,331 | 15,256 | 8,672 |
純資産 | 53,049 | 65,349 | 75,210 |
総資産 | 148,524 | 163,120 | 172,691 |
従業員数 | 1,575 | 1,738 | 1,811 |
(単位:百万円)
アルの視点からはどんな会社なの?
成長性を評価してみた
成長性への納得(プラス点数)
1 X線領域においてはニッチトップ
評価+6点
- X線技術を中心とした最先端の分析ソリューションを研究開発や産業用途に提供している理科学機器の専門メーカーで、業歴70年を超える。独自開発の技術製品はグローバル競争力があり、開発製造販売アフターサービスを世界各地の関連会社を通じて自社グループで展開している。
- 各種要素部品の開発、製造リソースを自社内に保有し、開発から販売までを一貫して自社内で完結できる。コアコンピタンス、事業構造、グローバルな顧客基盤、すべてが優秀な老舗企業である。
成長性への懸念(マイナス点数)
1 カーライルのLBOスキームの結果、財務体力は中小企業以下
評価▲2点
- 50年間当社を率いた志村社長がIPOを目指し、カーライルのPEファンドのスキームを受け入れた。概算想定だが、グループ全資産を担保にしてメガバンク3行から650億円を借り、カーライルが300億円程度を出資して既存法人2社の株式を960億円で買収したと思われる。
- この結果、既存2社の純資産はすべて社外流出し、直近決算時点で純資産550億円に対し、のれんという買収時上乗せ等の勘定が600億円計上された。赤字連続となれば、のれん勘定の資産性否認され、債務超過になる。更に、売上高800億円に対し、実質的にのれん対応となる借入金は570億円で、上場時点でも、現預金含めた全資産が金融機関担保になっている。とても危険な状態で、メガバンクのシンジケート団も目が離せないだろう。
1 ニッチマーケットにつき売上はそんなに増えていない可能性あり
評価▲1点
- 「X線分析機器の業界は、ある業者の機器が顧客の製品ラインに選定された場合、その保守やアップグレード等の継続的な取引関係が構築される傾向がありますが、その場合、当該顧客が他の業者との取引を切り替えることは費用の観点を含めて困難」と、目論見書で説明がある。
- この業界はニッチな分野であり、IPO前の当社も成熟段階にあったと推察される。カーライルのIPOスキームを受け入れて以降の、最近時の連結売上高増加は、一見良好に見えるが、コロナ反動特需と合併統合などの連結決算反映効果が相当な割合である可能性がある。要は、短期間しかIRを出さずに済むホールディング会社形式を用いた、カーライルの演出かもしれないということだ。
ABOUT ME
新規事業の構想が大好きです
IPOで株式市場に登場する企業から学びを得ています
職歴:ベンチャーキャピタル、リース会社企画部門、銀行法人融資
資格:応用情報技術者、中小企業診断士、FP1級ほか