Liberaware[リベラウェア]
2024年7月 東証グロース市場 IPO
会社URL:https://liberaware.co.jp/
成長力 E : 差別化で選んだ市場はニッチで未成熟!
- 屋内狭小空間の点検に特化したドローンの会社が上場する。
- 差別化が図られ過ぎていて、市場もニッチになっている。成長できるかな。
- ドローンはウクライナ戦争で兵器として進化した。ドローン自体は国策テーマとしての「防衛」や「物流改革」に絡むので、国の政策支援で大きく化ける可能性はあるよ。
- IPO時点では、ドローンの性能は良いが、室内狭小空間点検の市場が未成熟で、当面は急成長や黒字化が赤字が難しそうだね。成長性の観点からすると、評価は低くなってしまう。
アルが評価する成長可能性
会社の概況
【有価証券届出書による事業内容】
(以前略)当社は、「見えないリスクを可視化する」というビジョンのもと、ドローン・ロボット等(以下「ドローン等」 という。)により撮影したインフラ施設・設備等の映像情報を基に、顧客の安全性・生産性向上に資するデータへ加工して提供するソリューションを展開しております。インフラ等の老朽化や労働人口減少への対処が喫緊の社会課題であり、当社の提供するソリューションが当該課題を解決することにより、国内外企業の産業競争力の強化が図られ、ひいては、当社のミッションである「誰もが安全な社会を作る」の実現につながると考えております。 具体的には、ドローン等を軸としたハードウェア技術と、撮影画像・映像等の加工・処理・管理といったソフト ウェア技術を用い、インフラ施設・設備等へのDXソリューションを提供するインフラDX事業という単一事業を行っております。 当該事業セグメントにおいて、ドローン等によるインフラ・プラントの調査・点検・測量に資するデータの提供や、ドローンの製造・販売を実施する「ドローン事業」と、ドローン等により取得したデータの画像処理技術等により、映像、3次元データ、異常検知に資する情報等をデジタル上に構築・提供する「デジタルツイン事業」、そして、両事業を支える事業として、当社の技術力やノウハウをベースにした新しいソリューションを開発する「ソ リューション開発事業」を合わせた3つの事業を展開しております。(以下略)
【財務状況】
引用:株式会社Liberaware(E39788)有価証券届出書(新規公開時)
https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100TSI9.pdf
決算期 | 2022/7 | 2023/7 | 2024/4 (9ヶ月) |
売上高 | 260 | 380 | 610 |
経常利益 | ▲456 | ▲636 | ▲261 |
純資産 | 304 | 563 | 552 |
総資産 | 640 | 1,074 | 1,003 |
従業員数 | 44 | 43 | 52 |
成長性を評価してみた
成長性への納得(プラス点数)
1 準国策テーマのビジネス
評価+2点
- 国策、すなわち国が打ち出す政策をテーマとして事業を行う企業は、投資会社からすると有力な投資候補となる。国策テーマは「防衛」「宇宙」「AI」などが有名だが、政府は2020年に安全保障上の問題から「ドローン」を国内メーカー製への切り替えており、ドローンも防衛関連テーマとみなせる。ウクライナ戦争でドローン戦術が急速に進化し、注目度は高い。
- 防衛関連ではない当社にも、国家プロジェクトによる多額の研究開発費補助金が支出される予定で、きっかけがあれば化けるかもしれない。
2 差別化されたドローンとシステムは大手に採用され始めている
評価+1点
- 自社開発した屋内専用の産業用小型ドローン「IBIS」および関連システムを軸に、「ドローン及びシステムの販売、レンタル」と、「調査・点検・測量等を目的としたドローン撮影画像の提供」を行っている。サービスの中核を構成するドローンは20cm四方程度の大きさの屋内型小型ドローンで、防塵性耐熱性を有し、これまで困難とされていた「狭く・暗く・危険な」設備の点検業務や有毒性のガスが含まれているような空間においての調査点検を行うことを可能にしている。手のひらサイズで1台が1,000万円近いというから、相当な高性能品であり、競合は少ないだろう。
- 当社は合弁会社を通じて、JR東日本グループへの販路を固めている。日本製鉄グループと東京電力グループほか大手企業数社への販売も始まっており、これらの受注はいったん始まると底堅い継続売上になると思われる。
成長性への懸念(マイナス点数)
1 具体的な成長戦略がない
評価▲2点
- 世界のドローン市場は、輸送、測量、戦争、農業などぼ分野で拡大していくのだろう。しかし、当社の高性能ドローンは対象市場がニッチ過ぎるため、年間数十台しか販売できておらず、この市場で高成長が実現できるとは思えない。
- 原発廃炉調査や鉄道点検関連の現場では必要なドローンだろうが、高性能高価格すぎて、現時点では広い用途も思い浮かばない。当社IR資料の成長戦略ページにも、他のIPO企業のような具体的な戦略は記載されていない。
2 黒字化の目処が立っていない
評価▲2点
- 創業以来営業赤字を継続して計上しており、黒字化方法は「市場の拡大と共に、各サービスにおける案件の積上げによる売上高の伸長によって、粗利率の改善」と曖昧な方向性を出すのみである。
- 当面は多額の補助金による開発費売上も収入の柱になる見通しで、成長性どころか高収益企業になる絵が想像できない。