2024年6月 東証グロース市場 IPO
会社URL:https://wolveshand.jp/
とりあえず総評成長力 D : 成長はM&Aの進捗次第
納得点数 | 懸念点数 | 成長可能性 総合評価 |
+2点 | ▲2点 | 0点 (ランクD) |
※足元株価は考慮せず、総合評価はA~Eだよ!
- 動物病院33拠点を擁する大阪の企業が上場したね。
- 国内のペット数は減ってきているらしいけど、ペットにお金をかける飼い主が増えている。だから急成長できたのかな。
- 事業拡大を望む大阪の動物病院経営者を、投資会社が支援して、M&Aで動物病院などを買収してグループ化したみたいだ。IPOは投資会社の投資出口づくりの色合いが出ているね。
- 都市圏においては、飼い主ニーズ高度化と設備投資多額化の傾向が強まっている。当社のような、グループ化された動物病院の競争力が高まっていくと思う。
- 当社の成長にはM&Aが必須なので、投資会社と協働してグループの病院数を拡大させていく方向性だね。この手の成長戦略には課題もあるんだ。
アルが評価する成長可能性
【有価証券届出書による事業内容】
(前略)当社グループは、当社、連結子会社3社(株式会社ペットメディカルセンター・エイル、株式会社モデナ動物病院 及び株式会社ペット・ベット)及び持分法適用関連会社1社(飛鳥メディカル株式会社)で構成されており、動物病院及びペットサロンの運営、動物病院向けソフトウエアの提供、獣医療教育セミナーの配信及び医療用機械器具の製造・販売を主な事業として取り組んでおります。
当社グループが属する動物医療業界においては、人口減少や動物愛護法の規制強化などを背景に、犬・猫の飼育頭 数が減少傾向にある一方で、ペット寿命の長期化や「ペット=家族」という価値観の醸成により、ペットに対する医療費支出は増加傾向にあります(出典:ペットビジネスマーケティング総覧2022年版(矢野経済研究所))。“動物たちにもより良い治療を受けさせたい”という社会的ニーズの高まりを受け、当社グループでは、身近なケアからCT やMRIを用いた高度医療まで、幅広いニーズに応えることができる動物医療を提供してまいりました。いつでも安心して通える動物病院グループを目指し、動物医療の発展に寄与することで、これからも広く社会に貢献してまいります。(以下略)
【財務状況】
引用:株式会社WOLVES HAND(E39640) 有価証券届出書(新規公開時)
https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100TG7H.pdf
決算期 | 2022/6 | 2023/6 | 2024/3 (9ヶ月) |
売上高 | 4,295 | 4,651 | 3,523 |
経常利益 | 713 | 801 | 508 |
純資産 | 1,014 | 1,520 | 1,830 |
総資産 | 4,693 | 5,452 | 5,489 |
従業員数 | 364 | 397 | |
(単位:百万円)
アルの視点からはどんな会社なの?
成長性を評価してみた
成長性への納得(プラス点数)
1 投資会社支援による明確なM&A成長戦略
評価+1点
- 動物病院の経営課題解決にはグループ化が適するという戦略のもとに、事業拡大を望む大阪の動物病院経営者をJ-STARが支援して、M&Aで動物病院などをグループ化した。IPOはJ-STARの投資出口づくりの色合いが強い。
- J-STARは投資会社ジャフコのバイアウト部門メンバーが設立した投資会社で、今後も当社経営に関わっていくと考えられる。当社の成長戦略の柱はM&Aに収れんすると判断されるため、J-STARの関与でM&Aが進め着実に成長していくと考えられる。
2 動物病院のグループ化による競争力向上
評価+1点
- ペット数は漸減しているが、ペット医療市場規模は拡大傾向にある。動物病院経営の課題は、飼い主のニーズ高度化、設備投資高額化、獣医師確保と継続教育、システム投資、CSなど複雑広範囲であり資金負担も重くなっていることから、個人事業主による経営には相当な重荷となっている。
- 動物病院数は10年で15%増加してるようだが、都市圏においては投資高額化やニーズ高度化が加速し、組織的経営を行う動物病院グループがシェアを拡大してくと考えられる。当社以上に病院数を展開する企業は、イオンペット動物病院や、アニコムどうぶつ病院グループほか数社のみであり、市場環境も良いことから、当社の成長機会は十分にある。
成長性への懸念(マイナス点数)
1 のれん減損リスクと借入金残存で、M&A投資に制限あり
評価▲1点
- M&Aで買収する際に、企業を資産評価より高く買う差額は「のれん」として計上される。実態性が高くない資産であり、当社もM&Aの過程でのれんを42億円計上し、20億円を「見直したら価値がありませんでした」と減損している。直前期決算ののれんは16億円も残っていて、これは当社純資産15億円をこえる金額だ。
- 直前期売上高46億円に対し、総借入金は30億円も残っていて、維持投資成長投資のために、借入金はそんなには減らないと思われる。過去に多額のM&Aのれん減処理を行っており、総借入金も多額であることから、M&Aによる事業拡大投資は限定的にならざるを得ない。
2 M&A以外に大きな成長要因がない
評価▲1点
- 売上は獣医師数に比例する業種で、獣医師不足は業界の経営課題になっている。動物病院システム会社や、ペット医療機器製造販売会社も買収しているが、連結業績を大きく左右するほどの成長貢献は見込めなそうである。
- 事業収益は安定しているが事業成長性は低く、投資家を満足させる企業価値向上にはM&Aが必須と判断される。
ABOUT ME
新規事業の構想が大好きです
IPOで株式市場に登場する企業から学びを得ています
職歴:ベンチャーキャピタル、リース会社企画部門、銀行法人融資
資格:応用情報技術者、中小企業診断士、FP1級ほか