アル
2024年6月 東証グロース市場 IPO
会社URL:https://www.dmcompany.co.jp/
とりあえず総評成長力 D : 一定規模までは成長する!
納得点数 | 懸念点数 | 成長性 総合評価 |
+3点 | ▲2点 | 1点 (ランクD) |
※足元株価は考慮せず、総合評価はA~Eだよ!
- 三井住友銀行出身者たちが興した金融業だよ。収益の大半は債券流動化サービスで、いわゆるファクタリング業者。
- 医療機関向けの金融で、銀行が得意な経営面や管理面の改善計画で支援し、医療機関の持続性向上や収益改善にも寄与しているみたいだ。
- 事業がシンプルで分かりやすい。事業リスクは低く、ある程度までは成長が見込める。上手なビジネスを行っているね。金融系ビジネスパーソンがコンサル能力で起業するなら、お手本のようなIPO事例だと思う。
- 経営支援兼資金提供というのは大変な事業分野で、いずれ道義的責任によるジレンマも出てくる。ただ、一定規模までは成長できる安定ビジネスだと思うので、保有して損はないと思うよ。
アルが評価する成長性
【有価証券届出書による事業内容】
(前略)当社グループは、当社及び連結子会社2社で構成されており、医療機関等に対する経営サポート事業を営んでおります。私たちの理念は「人の願いを叶える会社たる」であり、安心できる医療、穏やかな老後を暮らせる福祉、子供から老人まで全ての世代が夢を持って生きられる仕組みを創り、より素晴らしい社会・世界の実現に貢献する ことを追求しています。事業を構成する主要なサービスは①F&I(ファイナンス&インベストメント)、②C& Br(コンサルティング&ビジネスリノベーション)、③HR&OS(人材&アウトソーシング)の3つのサービスであり、複合的に医療機関等に提供することにより事業展開しております。当社グループの特徴は、先ずはコンサルティングを行うことで、顧客の課題と問題点をあぶり出し、その解決策を実行するために、これら3つのサービスを融合して提供することであります。(以下略)
【財務状況】
引用:株式会社D&Mカンパニー(E39646) 有価証券届出書(新規公開時)
https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100TD74.pdf
決算期 | 2022/5 | 2023/5 | 2024/5 |
売上高 | 930 | 1,111 | 1,189 |
経常利益 | 235 | 250 | 274 |
債権・貸付等 | 4,595 | 7,194 | 8,456 |
銀行借入金等 | 4,300 | 6,773 | 7,291 |
従業員数 | 23 | 28 | |
(単位:百万円)
アルの視点からはどんな会社なの?
成長性を評価してみた
成長性への納得(プラス点数)
1 シンプルで儲かる金融ビジネス
評価+2点
- 本業を医療債権流動化サービスに据えて、買取先の医療機関の経営改善計画に携わり、経営をモニタリングし顧客の事業継続を支えている。元銀行員による、分かりやすく安定感のあるビジネスだ。
- 医療債権流動化サービスの仕組みを、足元金利相場で説明しておこう。国保社保は請求から入金まで2ヶ月以上かかる。毎月1億円の国保社保収入がある小規模病院は、支払準備に収入2ヶ月分相当の2億円の運転資金が必要になる。銀行から金利1%で借りれば2億円×1%=年間金利200万円で済むが、債権流動化をすれば毎月1億円×手数料2%×12ヶ月=年間手数料2,400万円と金利の10倍以上の支払いになる。当社のようなファクタリング会社は、銀行から低金利で資金調達し、このような債権流動化で手数料を得ているが、どこも高収益だ。
- 当社は買取債権高をどんどん伸ばし、足元では買取債権74億円で部門利益6億円まで成長している。買取債権は平均2ヶ月分として、月あたり37億円となる。中小病院が1−3億円の月商だから、顧客医療機関数も30先以上になっていると推察される。社保国保などは国が払ってくれるから、損失リスクも低い。
2 医療業界に対し一定のスタンスを置いている
評価+1点
- 一般にコンサルというと高い専門性で事業分野に踏み込んでいくのだけど、当社のコンサルは銀行経営改善計画のようなもので、経営や管理へのコンサルが主体のようだ。医療事業を自社でやる予定もない様子である。当社は医療機関への人材紹介会社も運営するが、医師看護師など専門職ではなく、事務経理など管理人材の紹介が主体で、無理をしていない。
- 医療コンサルや医療人材派遣のマーケットでは、多数の企業がしのぎを削るが、自社でも医療分野に手を出しているところが多い。当社のように金融収益に注力しているのは、安心感がある。
成長性への懸念(マイナス点数)
1 改善支援効果が出ないと収益に影響がある
評価▲1点
- 中小医療機関は業績不振のところが多く、当社に類似の業者も多数ある。そういった業者の「医療経営支援+資金供与」コンサル担当者は、週に1−2日来て実質的に経営をしている場合も含め、なかなか黒字化できないで困っているケースが多い。
- 2023年度の医療機関の倒産は過去最高であり、経営支援が必要な当社顧客の業況も安心できるものではないだろう。大口顧客に対する改善支援に限界がくれば、医療債権流動化サービスの維持も難しくなってくる可能性がある。
2 改善関与が長期化すると、収益成長が鈍化する可能性
評価▲1点
- 経営改善コンサルは非常に手がかかるビジネスであり、改善効果の出ない顧客が増えてくれば「どこで手を引くか、手を引いて破綻させていいのか」などの道義的なジレンマも出てきて、成長が鈍化する可能性がある。
ABOUT ME
新規事業の構想が大好きです
IPOで株式市場に登場する企業から学びを得ています
職歴:ベンチャーキャピタル、リース会社企画部門、銀行法人融資
資格:応用情報技術者、中小企業診断士、FP1級ほか