アストロスケールホールディングス
2024年6月 東証グロース市場 IPO
会社URL:https://astroscale.com/ja/
成長力 D : 素晴らしいが課題多い!
- 廃棄衛星など宇宙ゴミ問題を解決しようと、岡田社長が2013年に創業した宇宙ベンチャーだよ。2023年4月のispace、2023年12月のQPS研究所と、宇宙ベンチャーのIPOが出てきており、成長期待分野だね。
- 夢のような事業だけど事業内容はしっかりしており、上場前段階で機関投資家から445億円の出資を受けている。成長するかしないかというより、ワクワクする事業だ。
- 市場がないところに社会課題解決で市場をつくるという理念を、宇宙ビジネスで行うのはすごい。当社は世界的に注目されていて、成功すれば日本の教科書に載るかもしれない。
- 「このサービスにどこがカネを払うか」「事業化にはまだまだ時間とカネが必要」など課題が多い企業だけど、アルも事業実現にはワクワクしてるよ。
アルが評価する成長性
会社の概況
【有価証券届出書による事業内容】
(前略)当社グループは、当社並びに連結子会社である株式会社アストロスケール(日本)、Astroscale Ltd(英国)、Astroscale U.S. Inc.(米国)、Astroscale France SAS(フランス)、Astroscale Israel Ltd.(イスラエル)及びAstroscale Singapore Pte. Ltd.(シンガポール)(注1)で構成されております。
引用:株式会社アストロスケールホールディングス(E39661) 有価証券届出書(新規公開時)
当社グループは、宇宙空間における軌道上サービス(注2)を通じて、人工衛星運用者やロケット事業者の事業価値の向上及び宇宙の持続的な利用に貢献してまいります。技術面では、コア技術である「宇宙空間の非協力物体(注3)に対するRPO技術(注4)」及び関連技術の研究開発並びに宇宙空間で提供されるサービスの開発を行っております。RPO技術は、人工衛星やデブリの除去、軌道変更・軌道維持、燃料補給、観測・点検、再利用・交換、製造・修理といった様々な軌道上サービスを実現可能にするものです(注5)。
事業面では、当社グループが取り組む4つのサービスである、衛星運用終了時のデブリ化防止のための除去サービス(End-of-Life Service、以下「EOL」)、既存デブリの除去サービス(Active Debris Removal、以下「ADR」)、寿命延長サービス(Life Extension Service、以下「LEX」)、故障機や物体の観測・点検サービス(In-situ SpaceSituational Awareness、以下「ISSA」)につき、日本、英国、欧州、米国等において、調査研究・研究開発・宇宙空間での実証・サービス等購入に関する契約の締結や補助金等の獲得をしております。今後、政府・宇宙機関からの需要獲得を継続・拡大し、民間からの需要獲得へとさらに成長することを目指しております。(以下略)
https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100TCL0.pdf
【財務内容】
決算期 | 2022/4 | 2023/4 | 2024/4 |
売上高 | 910 | 1,792 | 4,667 |
税引前当期利益 | ▲5,563 | ▲9,314 | ▲9,219 |
純資産 | 14,091 | 14,890 | 5,401 |
総資産 | 20,125 | 30,437 | 24,990 |
従業員数 | 276 | 394 | 494 |
成長性を評価してみた
成長性への納得(プラス点数)
1 宇宙ビジネス人気で実現可能性が高まる
評価+2点
- 宇宙ビジネスでは、イーロン・マスクやジェフ・ベソスといったIT億万長者が民間企業参入への道筋をつけたことで、世界的に宇宙ベンチャーが増え、投資家の注目度も高い。
- 宇宙ビジネスは崇高壮大な課題解決事業で、黒字化まで膨大なカネが必要だが、投資家の審査を通過し資金投入が続く限り前進できる。アメリカ発にてバブルのような宇宙ベンチャー投資熱が出てきており、事業化への成功確率は高まっている。
2 軌道上サービス事業は夢でなく、事業としてホンモノ
評価+2点
- アストロスケールは軌道上サービス事業の専業とIRしているが、事業内容自体は現実的で、将来方向性にも問題ない。さすが主幹事の三菱UFJモルガン・スタンレー証券や国内主要VCの審査を通過しただけのことはある。アルの素人目からだが、IR資料を読む限りは夢の事業ではなく、技術や戦略において投資に値するレベルと判断される。
- 衛星事業を行う各国機関への、プロジェクト受託売上が立ち始めており、2025年4月期の予想売上高は180億円となっている。岡田社長の目指す宇宙ゴミ問題解決事業までは遠いが、損益均衡点には数年で至る可能性が高い。
成長性への懸念(マイナス点数)
1 「早すぎて普及しない」カテゴリーかもしれない
評価▲3点
- 宇宙ゴミの撤去をおこなう事業に誰がカネを出すのかという課題は、アストロスケール創業から議論されている課題であり、現在でも具体的に解決されていない。岡田社長の予見通り、宇宙ゴミの除去事業はいずれ必要となるだろうが、現在時点では時期尚早すぎて民間企業には適さないかもしれない。
- 最近の日本の宇宙ベンチャーIPOの事業を見ると、ispaceは月面調査や月面資源獲得で市場がある。QPS研究所も地球観測衛星データ事業として市場がある。アストロスケールのビジネスモデルは、ハーバード・ビジネス・スクールの教材に2回選出されたほど突出したものだが、宇宙ビジネスかつ既存市場なしとなると、事業化には相当な困難が予想される。
2 必要資金の調達が継続できない可能性
評価▲1点
- 今回のIPOは、事業化まで更に長期間を要することから開発費が嵩む見通しで、一部の投資家だけではリスクを取り切れなくなったことが背景にあるとも考えられる。
- 前述1の宇宙ベンチャー2社の足元時価総額を見ると、ispaceが660億円、QPS研究所が860億円。アストロスケールは2023年までに投資家から累計445億円の投資を受けており、上場時の時価総額は1,000億円前後。軌道上サービス事業の実現時の収益性から時価総額を算定すると、増資頼みの資金繰りは、いずれ限界がくると判断される。