Will Smart
2024年4月 東証グロース市場 IPO
会社URL:https://willsmart.co.jp/
成長力 D : 政策の追い風に期待!
- 地図をつくるゼンリンの社内ベンチャーだね。小粒で収益不安定だけど、社会課題解決色が強いことと、親会社ゼンリンの支援が期待できるため、株式上場に結びついたのかな。
- モビリティ(交通関連)業界の事業課題解決に対して、DX 技術を駆使した機器やシステムを企画提案し、受託開発と運用支援を行っているようだ。
- モビリティ業界を支える組織の半数は行政関連なんだよね。電通など特定大企業を除き、行政関連向けビジネスは「儲からない」のが世のセオリー。交通関連企業に十分な収益力がないことを合わせて考えると、アルのサイトでの評価は低くなってしまう。
- ユニコーン指向でなくゼブラ企業寄りに見えるので、このまま事業基盤を固め、国家政策の追い風で成長できることを期待したい。
アルが評価する成長性
会社の概況
【有価証券届出書による事業内容】
(前略)当社は、「アイデア」と「テクノロジー」を活用し社会の課題解決を行うことを目的として、課題発見のコンサルティングから解決のためのソフトウエアの開発、ハードウエアの提供及び納品後のサポートまで行うトータルサービスを提供しております。一部、海外の先進技術を持つ開発パートナーの技術協力や国内開発パートナーの協力を仰ぎつつ、当社が主体となってシステム開発を行うことで、顧客ニーズを満たしたIoTシステムを短い期間で提供することが可能となっております。
モビリティ業界(※1)では、これまでインバウンド対応のための業務量の増加、高齢化による現場業務の労働力人口の不足、近年のカーボンニュートラル、CASE(※2)の進展や地域交通の再編に対応するソリューション不足等が課題となってきました。当社では、これらの業界課題に対し、当社が持つIoT及びWebシステム開発技術と業界知見を掛け合わせることで、時代の変化に伴って必要とされる新規需要やビジネスモデルの変化に適した企画提案を考案し、その仕組みを自ら開発することで業界の課題に対応してまいりました。
また、顧客の発注に応じてシステムを受託開発する他、当社が独自のパッケージサービスとして展開するため、ソフトウエアを開発する場合もあり、他社の類似課題に展開できるよう一般化することで、より多くの企業に導入できるように、汎用化もしております。
そのため、当社の収益はシステム開発を行った際の開発売上のみならず、その後の保守売上やパッケージサービスの利用料売上も主要な収益となっております。(以下略)【財務状況】
引用:株式会社Will Smart(E39487) 有価証券届出書(新規公開時)
https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100T1NA.pdf
決算期 | 2022/3 | 2023/3 | 2024/3 |
売上高 | 1,103 | 813 | 1,086 |
経常利益 | ▲20 | ▲179 | 35 |
純資産 | 663 | 285 | 312 |
総資産 | 1,051 | 607 | 776 |
従業員数 | 43 | 55 | 50 |
成長性を評価してみた
成長性への納得(プラス点数)
1 交通DXは事業テーマとして強い
評価+1点
- 当社は、モビリティ(交通関連)業界の事業課題解決に対して、DX 技術を用いた機器やシステムを提案し、受託開発と機器システムの販売をしている。
- 公共交通などでは、利用者の利便性向上や豊かな暮らしに貢献できる手段として、DXに注目が集まっている。当社の事業領域には、強いニーズと高い成長性が確認できる。
2 法規制変更や政府施策が追い風になる
評価+1点
- 政府はデジタル田園都市国家構想を発表し、交通分野におけるデジタル技術活用を勧奨している。当社は行政や企業との提携を多方面で進めており、将来の成長機会に対する準備を行っている。
- 法規制や政策の変化は大きなビジネスチャンスである。交通分野は、安全や暮らしに影響があるため急激に変化しないだろうが、トップダウンで規制改革や行政施策が行われる際に、当社は知名度は優位に働く。
成長性への懸念(マイナス点数)
1 低収益業界で薄利取引となる可能性
評価▲1点
- モビリティ業界へ特化することを強みとしているが、交通業界の組織や企業は事業収益率が低いところが多い。
- また、交通DXの対象の半分は行政組織という分析もある。どの業界においても、相見積もりや入札が必須条件となる行政相手のビジネスは、収益が薄くなるのが常識である。
- もともと全国に多く存在する交通関連インフラのシステムは、既存の情報機器商社やメーカー、システムインテグレータ企業が提供しており、珍しい分野でもない。そこに特化するのは社会課題解決メッセージであり、高収益は期待できないかもしれない。
2 メインプレーヤーになれない可能性
評価▲1点
- 交通DXには、高速通信インフラとの接続や、AIを用いたシステムの開発が必要となる。当社も韓国企業からライセンス提供を受けて車両データ取得に踏み出そうとしているけど、メインプレーヤーになるのは難しいと思われる。
- 多額の投資が必要な交通DXにおいて、当社は、現在主力のデジタルサイネージなどの周辺分野でしか、強みを発揮できない可能性がある。